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広告塔

ねえ

あの広告塔をみてよ

なんか洒落ているね

きれいだね


誰かが指さして通りすぎてゆく

大きな街の交差点付近にて


小雨に濡れても

光っている夜のビル

無数のネオン

霞まないように描かれた

広告塔のビジュアルカラー


ただそこに立っているだけ

傘なんてない

持っているかなんて

聞かれもしない


ただずっとそこに

立っていてと言われるだけ

あっちに動きたいと

意思を持つことなんて

許されなかった


またトアル日は

うまく言いくるめられ

偽善者の都合のいい目印

言い逃れのための後ろ楯


そんな

僕の身にも

おぼえのある雨の匂い


広告塔

僕はあなたのように美しくはない

けれどそこにあるあなたの淋しさ

少しだけわかる動物が

ここにいること

気づいてください


交差点

雑多な靴音と

人いきれに紛れながら

夢中になって僕は歩いた


こけそうになりながら

両腕をあげながら

スマホであなたを映した


馬鹿な奴がいると

気づいてくれましたか


気づいてほしいのです

いつも都合のいい

目印にされていた

後ろ楯にされていただけの

消しクズにまみれた僕のことを


高いビルに掲げられた

美しいあなたの姿

みつめるうちに透けてゆくのです

美しいあなたの奥に

人間の強い意思を感じたのです


ただの広告塔とは呼ばせない

ここから動けなくても

そこに動いている誰かの心を

動かして見せるのだという意思を


僕はあなたのように

強くは成れないけれど

あなたを唯一の

僕だけの正論のお守りとして

自分の手もとへと

動かしてみたくなったのです


明日

SNSにあなたの写真を

かかげようと思うのです


きっと僕だけではなく

たくさんの人が色々な角度で

あなたのその美しい姿を

かかげると思うのです


ふだん

どこにも行き場のない人も

そんなことはない人も


何の反応無しでもいいのです

ただ願いはひとつだけ


今動いていると思える

自分の意思に

近づいてみたいのです


あのとき

僕もあの街の交差点の

雑多な人いきれの一人として

足音を立てて動いていたのだと


ただそれだけ

噛みしめてみたいのです


# by soratosan | 2024-03-23 07:07 | Trackback | Comments(0)

独り

独り_d0072751_18251212.png
真昼の交差点
大勢の中の一人
混雑していて空気は薄いけど
一人になる場所としては
案外快適だったりして

手の届く範囲の
流行りのシャツに腕を通せば
益々僕の影は薄くなる
どこの誰だなんて誰も言わなくなる

一室のデスクの上
少数の中の一人
誰も見ていないのに見られているようで
動けなくなってしまった時は

できるかぎり広い場所に向かって
陽のあたる外の心に向かって歩く
大勢の中に紛れて何もなかったことにする

生きている中で生まれてくる計り知れない
心の渦をこの流れの中に捨てにゆく
だって取り戻したいから
ただの一人ではない
正真正銘の独りとしての僕を

大勢の中でも独り
少数の中でも独り
生まれる時も
この世を去る時も独り

僕も独り君も独り
どこにいても誰といても独り
代わりなんていないかけがえのない独り




# by soratosan | 2024-03-16 11:11 | Trackback | Comments(0)

半日陰

半日陰_d0072751_15435701.jpg

忘れないでいて
この世には
永遠などないのだと

ひとときの宴の夢に
溺れすぎて
たったひとつの自分を見失わないで

一つの大きな輪の中にいるだけで
満足しないで
安心してしまったら
それは終わりの始まり

気を付けて
だって
この世には
永遠なんてないのだから

眩しい光の場所は
誰からも愛されます
暗い影しかない場所は
誰からも避けられそうです

忘れないでいて
この世には
光も影も必要なのだと

どちらかしか愛せなくなる世界
それは
終わりの始まり

ずっと影しかない
日々を送る人のために
勇気づけるために
抜け出すために
存在します
さあ いらっしゃい
この世の半日陰の中庭に

ずっと光だけではなく
ずっと影でもない場所が
そこにはあります

半日陰
あなたは
光と影の切なさを知っています
永遠などないことも知っています
生きるってことは
永遠ではないことも忘れてはいません

半日陰の庭に苔が蒸すように
誰かを何かをながくやわらかく
愛することができますように
限りある僕たちの
限りある人生の色々の砦

そこはかとなく憂いの水色が
じわじわと滲んでくる日々も
光と影を抱きしめながら半日陰

今日も僕はここにいますよと
ちらちらと静かに光っていたいのです
ちらちらと静かに影っていたいのです
















# by soratosan | 2024-03-09 08:08 | Trackback | Comments(0)

夢中





夢中_d0072751_13201432.png


やりたいことが今

特にみつからないのならば

それはそれで自身にとって

人生最大のチャンス


ひねくれたこと言ってくれるよナンテ 

ひねくれて冷めたくちびるを

尖らせる余裕があるのなら

いっそそのまま

鳥になって歌ってしまうほうがいいか


生きている時間は永遠じゃないから

永遠の幸せっていう幻は

探す必要なんて無いはず


誰でも生まれた瞬間から

好きになれるものを探している

迷うだけ迷えるのも幸せのうち

そう言い聞かせて生きてきた僕

たぶんこれからもずっと


うつむいたまま歩いた時に見つけた

水たまりに映る光の色は今も忘れない

どこかに繋がっているという

小さな幸せのひとつとして


限りないものを永遠と呼ぶ空の下で

生きている僕たちの特権の一つは

限られた時間の中で

自分にとっての夢中という

永遠を探し続けること


たとえ見つけられなくてもいい

だってこんなに迷って悩んで

探し続けることだって

夢中って呼べる


いつか幸せになれるといいね

それだけでもいい


優しすぎて孤独になった人たちが

そう言ってくれるのなら

それが可能でも不可能でもかまわない


ため息さえも生きているって思える

どこかに繋がっているという

ほのかな意識のひとつとして



# by soratosan | 2024-03-02 11:11 | Trackback | Comments(2)

さようならグレーゾーン

さようならグレーゾーン_d0072751_13201432.png

結婚式の披露宴に
呼ばれなかったんだと
彼女は僕の前でうつむいた

あんなにいつも一緒
四人一緒だったのに
呼ばれたのは三人だけ

人生の晴れやかな席
一人だけ
選ばれなかったことが
彼女の友情を傷つけたんだな

突然引かれてしまった
ギリギリで引かれてしまった
線の向こう側の人間
その人だけしかわからない
グレーゾーンの淋しさ

手にしていた二次会の招待状
僕と同じ招待状
そっくりだねってふざけてみた

いつでもひとくくり
なんでもひとくくり
どうしても入らないもの
仕方ない側の人間
突然線を引いても
彼女は怒らないって思ったんだろうな

彼女たちのひとくくり
僕にはわからないけれど
やさしい人はいつも犠牲者になる
これだけは
どこかの偉人だって言っていたよ

君は嫌われたわけじゃないし
君が悪いわけでもないから
どうかどうか顔を隠さないで
どうかこっちをむいて

一足先に
僕たちだけのひとくくり
僕たちだけの
お散歩二次会しませんか

君が友情を共にした
新しい花嫁のこと
僕たち一緒に
お祝いできるようにね

線引きされるかされないか
微妙な瀬戸際
そのたびに恐れて
媚びを売ったり誰かをはぶったり
そんな人間にはなりたくないね
 
群れを嫌うというよりも
苦手な僕だって正直
昔は怖かった

友情なんて
思いやりが感じられたら
グレーゾーンなんて
どうでもよくなるし
そうでなければ
そのまま消えてゆくし
我慢する必要なんてないし

僕はあの時
辛い思いをしてよかった
君が隠そうとする
傷ついた影
あの時と同じ色の
影が伸びる月の夜
無理して笑わなくていいんだよ

こんにちは もやもや
グレーゾーン
さようなら もやもや
グレーゾーン
夜が朝になる瀬戸際みたいに

つまらない線は消してしまおう
まっしろでまっさらな
明日という消しゴムで
ぜんぶ



# by soratosan | 2024-02-24 07:07 | Trackback | Comments(0)